その他のリンパ浮腫治療 

圧迫法・弾性包帯/テープ


◎ 圧迫法・弾性包帯(テーピング)
リンパ浮腫の治療にはマッサージ以外の治療が加えられます。マッサージの後には圧迫療法が必要とされています。弾性包帯と圧迫着衣(ストッキング・スリーブ)を用いて行います。浮腫の減量時期には弾性包帯(テープ)は特に効果的で、圧迫着衣は減量された浮腫の状態を維持するのに効果的です。弾性包帯と圧迫着衣はそれぞれ長所と短所を持っており、状況によって使い分けする方が理想的です。テープの場合は伸びの少ないテープを何重にも重ねて使用し、硬さを出します。テープ(包帯)は両側の部分は織り目が詰まっていますが、真ん中の部分は伸びやすくなっています。一重や二重程度では筋肉に力が入った場合に真ん中の部分は伸びやすく圧がかかりにくいので、何重にも巻き重ねます。また、皮膚の保護のためと、圧力を均等にかけるために綿やスポンジの下地も巻きつけます。骨際の凸凹のある部分を補正するためのラバーも使います。面倒だからと、この下地と補正をしないと効果が上がらないだけでなく、むくんだ部分に凸凹やクビレが発生したり皮膚を傷つけることもあります。きつく巻き過ぎても流れを悪くしますし、ゆるすぎるとずり落ちたり効果が落ちてしまいます。弾性包帯(テープ)の難しさと面倒な点はここにあります。ただ、弾性包帯(テープ)は常に変化している浮腫の状態に、その都度適した圧力を加えることができますし、圧の微調整ができます。慣れてくると上手に巻けるようになり、効果がはっきりとしてきます。


圧迫法・弾性着衣と運動法


◎ 圧迫法・弾性着衣
圧迫法には弾性ストッキング・スリーブでの圧迫もあります。形の決まった着衣で圧迫ができると、外出はもちろん家の中でも動きやすく、ずれた場合でも直しやすくなる利点があります。装着の手間については弾性包帯との比較は単純にはできませんが、下地を作ったりパッドを当てたりなどの手間は軽減され、ごわつき感も少ないと言えます。更に着用するたびの圧力のばらつきも少なくて済みます。要は動きやすくなります。弾性包帯(テープ)より不利な点は、着用する場合にけっこう力が必要な点と、毎日のように変化するむくみの状態にこまめに対応しにくいことです。既成のものでもオーダーメイドのものでも、一定のサイズで作られているので、浮腫の増減によって求めたい圧力がかけにくい状況が生まれることがあります。特に浮腫の減量の途中ではサイズダウンに追いついていけない場合が出てきます。理想的なストッキング・スリーブの着用法としては、むくみの減少が少なくなって、サイズが安定した時点から着用することと言えます。 しかし、浮腫の減量段階で弾性包帯(テープ)での圧迫が困難な状態であれば、次善の策として圧迫着衣を装着することも選択肢の一つだと思います。大切なことは、リンパマッサージと圧迫法はセットにして考えるものであるということです。また、脚や腕が細ければ良いという考えで圧力を強くしたり、小さいサイズのものを使用すると、体への負担や組織へのダメージを増やすことになります。適正なものを選択する必要があり、注意が必要です。
 
◎ 運動法
リンパ浮腫の治療には圧迫を加えながら運動することも含まれます。弾性ストッキング・スリーブまたはバンテージ・テーピングでの圧迫をしながら、筋肉や関節を動かします。静脈の還流と同じで、筋肉の膨張によるリンパ管の圧迫はリンパ管内のリンパ液を心臓へ送り込む補助となります。リンパ管に停滞しているリンパ液が少なくなれば、組織液をリンパ管へ取り込みやすくなります。同様に関節の動きもリンパ液の輸送を補助します。着衣やテープによる圧迫はこのことを更に補助するのです。効率よくリンパ液の輸送を考えるならば圧迫は欠かせないと言えます。運動の内容は様々で特定の動きはありませんが、無理のない範囲内で行います。筋力の増強や関節可動域の改善を目的としていませんので、ダンベルなどの重りは使用しません。疲労を感じない程度に行って下さい。


圧の種類の違い


◎ 圧迫の種類の違い
リンパ浮腫の治療で圧迫療法が欠かせない事は明らかです。浮腫の量を減らして行く場合にも、減量された浮腫の状態を維持して行くにしても圧迫療法が必要になります。減量の場合には弾性包帯が最適で、就寝中に着用することも可能です。減量した浮腫を維持し、日常生活を送る段階ではストッキングやスリーブが便利です。 リンパ浮腫の場合の圧迫は静脈瘤などのストッキングとは強さも質も違っています。静脈瘤や血栓予防のためのストッキングは20㎜/Hg程度の圧力です。この時に使われるストッキングは伸び(伸縮性)の良い素材で作られていて、筋肉に力が加わっていない場合、つまり筋肉が膨らんでいない①の状態(静的状態)で圧がかかりやすくなっています。活動(動作)時に筋肉に力が加わり膨らむ② とストッキングの素材も筋肉の膨らみに合わせて伸びるので、押さえつける力(抵抗力)は伸びの少ない素材よりも小さくなります。 リンパ浮腫の場合はこの様な伸びの良い素材より、伸びの少ない素材を使うことが望ましいと言えます。リンパ浮腫治療で使用する弾性包帯やストッキングの圧力は30~40mm/Hg程度の高さになります。伸びの少ない素材は筋肉の活動時には膨らみを抑える抵抗として作用します。外側から抵抗を受けた力は筋肉の内部方向へ向かい、リンパ液を深部へ送る力となります。そのためリンパ浮腫の治療に適しているのです。適したサイズでのこの素材は筋肉の静的状態では強い締め付けにはなりにくいのです。この様な違いを理解して圧迫を行うことが効果的な治療と言えます。力が抜けている、つまり筋肉に力が加わっていない状態よりも、筋肉に力が加わった状態の方が筋肉の体積や太さが大きくなります。例えれば、腕を曲げた時に「力こぶ」が出てくる状態です。弾性包帯を巻くのは、「力こぶ」が出ていない状態の時にその周りを包帯で巻く事と同じです。包帯・テープを何重にも巻くと筋肉の周りに壁を作る作用をします。その時に筋肉が太くなろうとすると、包帯の壁が抵抗となり外側から押さえられるので筋肉や組織内部の圧力が高まります。この圧力は深い部分にあるリンパ管にも圧をかけます。この力は筋肉に力が入っている時にだけ生まれる一時的なものなので、力を抜いた時には深い部分にあるリンパ管にかかるの圧は減ることになり、ポンプ作用が生まれます。これが伸びの良い弾性包帯だと筋肉の膨張に合わせて包帯も伸びるために抵抗とならず、深い部分にあるリンパ管に圧がかかりにくくなるのです。また、この圧力を生み出すためには筋肉の膨張が必要なので、他の人に運動をさせてもらう「他動運動」では意味がありません。必ず自分で筋肉に力を入れて動かす「自動運動」が必要です。


治療を受ける時の注意 


◎ 治療を受ける時の注意
リンパのマッサージを受けている時はリラックスしていることが大切です。どのような種類のマッサージでも同じですが、マッサージをされている部分の力が抜けていないと望むような効果は得られません。そのために患者さんがベッドで横になった状態で治療を受けることが多いのです。リンパドレナージュの場合は心臓へリンパ液を還流させるという目的があり、重力に逆らった状態を軽減するためにも心臓と患肢の高低差を小さくするために横になることが必要になります。その上リンパドレナージュでは別の理由もあります。リンパ管は心臓の様に自分で自動的に動いています。リンパ管の動きをコントロールしているのは自律神経であり、副交感神経が優位となることでその働きが高められ、より多くのリンパ液を輸送できるようになるのです。副交感神経優位の状態は体や心がリラックスした時に見られますし、逆にリラックスしないと副交感神経は優位にならないのです。リンパドレナージュの際に横になってリラックスした状態を作り出すことはこの点から必要なことなのです。 時々、リンパドレナージュの治療が終わると直ぐにトイレに行かれる方がいらっしゃいます。治療中に眠ってしまう方もいらっしゃいます。副交感神経優位の状態は体の修復に必要な様々な反応を行っている状態なのです。セルフマッサージを行う事も大切であり、必要ですが、時々リラックスした状態で専門的なドレナージュを受ける事も大切です。また、セルフマッサージを効率的に行うためにはマッサージ部分や体のリラックスした状態を作り出すことも必要といえます