リンパ浮腫治療に役立つコラム

 - リンパ浮腫 - 治療のコラム

 


リンパマッサージ(ドレナージュ)を行う時にはマッサージをする場所のリンパがどこのリンパ節に集められるかを知っていることが大切になって来ます。他のページにも書いてありますが、体の表面のリンパは、左右の鎖骨の上の窪み・左右の腋の下・左右のソケイ部(腿の付け根)に集められます。ですから、リンパ管やリンパ節が無傷の場合にはそこへ流してやることが最も効率的です。
頭・顔面・首・肩は鎖骨の上、胸・ウエストラインから上の上半身・腕は腋の下、ウエストラインから下の下半身・脚・足はソケイ部です。それぞれのエリアは基本的には独立していると考えて良いため、上半身のむくみが下半身に直接的な影響を与えることはありません。乳がんの手術をされた方が、脚のむくみと腕のむくみが関係しているのではないかと心配されて質問をされた事がありましたが、心配ありません。
ですが、独立したエリアでも例外的に一部、隣のエリアと連絡通路を持っていてリンパの往来が可能な部分が有ります。がん治療などでリンパ管やリンパ節を切除した後にむくみが出た場合には、この境目を通れる通路のお蔭で、無傷のエリアやリンパ節へリンパを誘導してあげられるのです。この様なリンパの管轄エリアの独立性と相互連絡がリンパマッサージの大前提と言えます。 
 



一次性(原発性)リンパ浮腫だけでなく二次性(続発性)リンパ浮腫も、基本的には個人個人の体質の違いにより発生します。更にいえばリンパ管やリンパ節といったリンパ器官のネットワークに個人差(個体差)があり、ネットワークが密であるか粗いかという問題ともいえます。
足などがむくむことは疲労や立ち続けの場合などにどなたでも経験することで、それ自体は生理的なものなので病気ではありませんし、一時的なむくみはそれほど気に留める必要が無い場合が大部分です。ですが、そのため一次性リンパ浮腫の診断を下しにくくし、診断に至るまで以前では一年半とか一年もかかってしまう例を生み出す原因でもありました。
二次性リンパ浮腫は手術・放射線治療という原因・誘因をある程度特定または推測する事が出来て診断もつきやすく、複合理学療法でも障害箇所を想定できるので、健全なリンパ節群への浮腫液の誘導(マッサージ・ドレナージュ)という方法が取られます。
一次性リンパ浮腫の場合は障害箇所の特定は出来にくいのですが、リンパ器官自体が傷ついているわけではなく、ネットワークが足りないためにむくみが発生していると考えられます。そのため、一次性の治療はリンパ管ネットワークを刺激し、リンパ管の働きを活性化する事となります。リンパ管のポンプ活動を助け、活発にし、お荷物であるリンパ液を増やさないことを心がけます。二次性と違いリンパ管やリンパ節が傷ついているわけではないので、迂回をすることなく患肢と直接関係しているリンパ節群を目標として排液を促してやることができます。その点では二次性のものより手間がかからないといえます。
マッサージ以外は全てのリンパ浮腫治療法と同じで、圧迫・運動は必須です。セルフマッサージやセルフテーピングなど家でのセルフケアは重要ですが、重篤な場合や浮腫がなかなか引かない、または増加している場合は集中的な治療を必要とします。数か月単位での定期的なチェックも必要です。
 



一般に言われている様に、そして今まで述べてきた通り、リンパ浮腫の治療に完治はありません。リンパ浮腫の治療とは、むくみを減少させ、生活に支障なく、炎症を起こすリスクを減らし、良い状態を保って行くことが目的になります。良い状態を維持することは消極的にとらえられがちですが、治療の大きな柱といえるのです。
体に備わっているリンパ器官の数や、器官同士のネットワークが緊密であるかどうかという差がリンパ浮腫発生の原因であるため、浮腫を減らす治療にどの位の期間が必要なのか、どの程度の治療頻度で状態を維持できるのかは断言できません。体に備わったリンパ管の状況だけでなく、浮腫発症からの経過した期間、その組織の状態、生活の活動状況も大きく関係して来るため個人差が大きすぎるのです。
ドイツの様に集中的に浮腫を減らす期間を設けている場合は、通常4~6週間程度の入院治療という積極的治療の後、浮腫をコントロールして行く段階に移るという目安があります。日本の様に集中的な治療が難しく、通院治療が主となるケースでは、月に1回なのか週に1回なのかといった通院頻度や、治療の回数、次の来院時までの家でのケア、体調、仕事量などによって治療効果に差が生まれます。
家でのケアにも積極的で、週2回の治療で2か月程度で良い状態になった例もありますし、仕事を続けながら週1回の通院治療をされ、1年ほどで状態が安定したケースもあります。
家でも弾性包帯を続け1か月ほどの治療で浮腫が減少したので、2か月に1回程度の通院に変えたらむくみが戻ってきてしまったなどという場合もあります。
浮腫減量効果が比較的早めに出ても、状態が安定するにはやはり1年から1年半程度かかるように思います。
この様に積極的治療の期間は人それぞれですので、治療中でも浮腫の状態を常にチェックし、積極的治療の回数は徐々に減らし、維持の治療・ケアを増やし、それを継続して行く事となります。


 


 
リンパ浮腫の治療を受けに来られた方々に、「むくみが発症した時に何か思い当たるキッカケはありましたか?」とお聞きしています。一番多い答えは「特に何も思い当たりません」という答えです。乳がん・子宮がん・卵巣がん・大腸がん・前立腺がんなどのがん治療でリンパ器官の切除(廓清)をされた方はリンパ排液能力が低下しているので、それまでは何でもなかった事や、すぐに回復できていた負荷でも負担となってむくみが続いてしまうことがあります。思い当たるキッカケとしての答えで多いものは旅行があります。飛行機だけでなく列車・自家用車・バスの旅行や遠出でも、旅行の最中や後にむくみが出るケースです。また、引っ越しの後という方もいらっしゃいます。忙しいのでついつい休憩を取らず、思いがけなく疲れが溜まってしまっている場合です。身内の方の介護・看病の後というケースもありました。更に抗がん剤治療の最中・後に発症することも多くあります。抗がん剤の副作用としてむくみの出る場合もあるので、注意が必要です。抗がん剤治療が終了したらむくみは無くなったという方もいらっしゃるので一概には言えませんが、これらの場合にはリスクのある部位によく注意を払っておく必要があります。 



普通のむくみでは運動を行う方がじっとしているよりもむくみが減少する事が多くあります。筋肉や関節の運動は静脈血やリンパ液の心臓への還流を補助するからです。特に下肢は心臓より下にあるので重力に逆らう力を必要とします。高齢の方でベッドに横になっている時間が多く動きが少ない方や、じっと座ったままの方にむくみが多く発生します。そのためリハビリ運動は効果が高いのです。むくみがちな方の注意事項は「エコノミークラス症候群」とほぼ同じなので、活動することが大切です。一方でリンパ浮腫の方は疲労が大敵ですので、運動は多すぎないように自身に合った適度な運動量を見つけ出すことが重要となります。圧迫療法を同時に行っている場合、日常生活の活動でも十分なこともあります。運動を付け加えると負担となって、なかなかむくみが減少しないことも経験します。むしろ大人しくしている方が浮腫が減少するケースも見受けられます。難しい点は活動量が少ないと筋肉量が減少し、筋力が少しずつ弱ってきてしまう場合があることです。実際に下肢リンパ浮腫の方でむくんでいない方の脚が細くなってくることもあります。むくみが厳しい場合には休養と運動・活動のバランスを見極めながら治療して行くことになります。