自分で行うケアの方法

セルフマッサージの限界


リンパ浮腫は入院などで集中的に減量しても、その後も良い状態を維持して行くためのケアが必要とされるので、ケアを長期間続けて行くことが求められます。そのためにセルフケアは大切なものです。
運動や生活上の注意、圧迫ストッキング・スリーブの着用は自分自身で行えますが、セルフマッサージ(ドレナージュ)の一部は自分だけでは出来ない部分や、やりづらい部分が出てきます。腕のリンパ浮腫の方の場合の背中を通したドレナージュもその一つです。コラムの「リンパマッサージの大前提」で書いたように、ある範囲を管轄しているリンパ節は決まっているのですが、別の範囲同士が全く関係が無い訳ではなく、若干の連絡があり、この連絡を使うことが二次性リンパ浮腫の治療のやり方です。その連絡は背中の真ん中といった手の届かない場所にあり、そのことがセルフドレナージュの限界となっています。
また、マッサージを受ける部位に力が加わって緊張していない、脱力状態が大切なのですが、自分でマッサージをする場合には体勢上の問題からそこにある筋肉に力が入ってしまうことも仕方なく、これも限界の一つといえます。
更に、リンパ管の働きは副交感神経が優位になっている状態の方が活発になりますが、これは交感神経が興奮していない、リラックスした眠くなっている状態なのです。自分でマッサージをしているということは、意識がしっかりとしていて、体は活動モードになって交感神経が活発に働いている状態です。そのため副交感神経の働きは抑えられているので、体のメインテナンスに関係しているリンパ管の活動にもマイナスの影響を与えるのです。
セルフマッサージを行う場合にはこの様な限界が有ることも自覚しておきましょう。


 

 夏のケア

細かな注意


リンパ浮腫のケアにとって日本の夏は厳しい季節です。細かなことに注意を払ってむくみを増やさない事が大切です。
◎虫刺され
夏は肌の露出も多く、蚊やその他の虫による虫刺されには要注意です。虫刺されは炎症となり、リンパを増やし、それを解消するためにリンパ管は余計に働かなければなりません。しかし、リンパ浮腫の方はリンパ管に余力が少ないため「むくみ」となっているので、負担が増すと「むくみ」に反映されてしまいます。皮膚は外の世界と体の間にあるバリアとして病原菌などの侵入から体を守る働きがあります。しかし、そのバリアが破られてしまうと感染症などにかかり易くなり、炎症を起こし、結局「むくみ」が増加してしまいます。ですから、長袖のシャツを着たり、虫よけスプレーをかけたりといった虫刺されなどを防ぐ工夫をしたり、刺されてしまったらすぐに手当てをすることが必要となります。
◎水虫
高温多湿な夏の時期には水虫も活発になります。冬の間には休んでいた菌類の活動が、夏に出現することも多くあります。こまめなケアが必要です。また、プールなど大勢が素足で歩く場所も感染の可能性が高いので注意しましょう。
◎あせも
夏は普通に生活している場合にも「あせも」は出来ますが、リンパ浮腫の治療では圧迫治療が必要なため、更に「あせも」ができ易くなることがあります。日中は気を付けていても、夜間に無意識に「あせも」を掻き壊す事もあり、皮膚のバリアを壊してしまいます。夏季は「あせも」でなくとも湿疹などの皮膚にダメージを与える症状が起きやすくなります。この様な皮膚のダメージを極力避けることも考えながらのリンパ浮腫治療になるので、夏季の治療は難しい選択を迫られます。
また、気温が高いので浮腫の肢全体に熱感を感じることもあります。特に皮膚が赤くなっていたり、斑点・湿疹があったり、部分的にも熱がこもっている様に感じるなどの症状がある場合には、一時的に圧迫療法を諦めなければならないこともあります。
◎日焼け
日焼けも皮膚炎症です。極力避けるものとして、リンパ浮腫治療の開始時の注意に含まれています。
この様に、夏の時期のリンパ浮腫治療には他の時期より細かな注意が必要になります。
対処法としては、
①熱感や皮膚に赤味があれば冷やす
②異変や変化があったら、すぐにお医者さんに診てもらい適切に対処する
③皮膚の変性があれば、圧迫などはしばらく見合わせる。部分的であればその部分のマッサージは行わず、全体的であればマッサージも行わず安静にしている
など、消極的な方法しかありません。
夏季は充分注意して過ごされ、乗り切って頂きたいと思います。


 炎症を知って

むくみで起きる炎症


注意事項のページの繰り返しになりますが、リンパ浮腫の方には時折、急な発熱を伴う炎症が起こることがあります。蜂窩織炎と呼ばれるもので、38度以上の高熱が突然出てきます。しかし、リンパ浮腫になっていなくともこのような炎症が引き金になってリンパ浮腫になりむくみが継続してしまう場合もありますし、リンパ浮腫になってしまった方でも炎症の可能性を聞いていないとか、それを知らない方がいらっしゃいます。そのため一旦炎症が起こると、どう対処して、どのお医者さんに行ったらよいか惑われる方もあります。浮腫が軽い時期でも炎症は起きますし、炎症で浮腫が更に悪化してしまう傾向もあります。どの様なものなのか、どう対処したらよいかを予備知識として知っておくことは重要です。
初期の段階では熱は出ていないが、「皮膚に赤い斑点やブツブツが出来た」「肌の一部に赤味や熱感があった」などのケースもあります。因果関係ははっきりしませんが前兆なのかもしれません。
熱は急激に高くなることが多く、急に悪寒がしてガタガタと震えがするので、冬などにはインフルエンザを疑われたというケースもあります。消炎剤や抗生物質を処方されることが多いようで、3日程度の投薬で済むケースもあれば3日から1週間程度の入院をするケースなど様々です。軽い場合には37度を少し越える程度の熱で収まることもあります。皮膚に熱を持った場合には冷やすことも必要です。
この様な炎症は疲労などで体力が落ちている時に出やすい傾向にあります。むくみのリスクをお持ちの方は特に疲労に注意する必要があります。
また、リンパ廓清を受けられた方はこのような炎症の可能性があり、炎症が起きた場合には先ず手術をなさった主治医の診察を受けるということを知っておくことが大切です。


 静脈とリンパ管の吻合

術後のケアの注意


リンパ浮腫の治療にリンパ管と静脈を何カ所かでつなぐ吻合手術があります。すでに数十年前から行われています。
手術後の状態が良くても再び浮腫が出現する可能性が常にあるので、圧迫ストッキングなどを着用するなどのケアは継続して行く必要があります。また、一度の手術では効果が得られず、2度・3度と手術をされる方もいらっしゃいます。
手術後のケアについては、第一に主治医の指示に従うことが大原則です。その上で、更に浮腫のケアとしてマッサージ(ドレナージュ)を含むセルフケアをされる場合にも、やはりいくつかの注意が必要となります。
①基本的にはリンパドレナージュの原則を守る
ドレナージュをする際にはむくみを取りやすい環境を体に作ることです。つまりリンパ液を逃す先を作ってから、むくんだ部分のドレナージュを行うということです。健全なリンパ節や腹部のドレナージュ、呼吸法によるドレナージュを事前に行う事です。
②吻合手術をした場所・箇所を確認し、その瘢痕部分にはマッサージを行わない
たとえ手術の傷跡がどんなにきれいでも、その箇所のリンパ管が傷ついていることに違いはありませんし、瘢痕組織にもなっています。リンパマッサージの原則でも、火傷の跡や手術の跡はマッサージを加えないことになっていて、リンパ管の切断が起きていたり、組織が変性していたりするために禁止されています。この場合には、傷ついた組織の周囲をマッサージし、傷跡を迂回する方法でリンパ液の通過を助けます。瘢痕組織の周囲を慎重に丁寧にマッサージします。リンパドレナージュは皮膚に手や指をなるべく広い面積で当てて行う事を基本としていますが、周囲をマッサージする場合は指先などの小さい面でマッサージすることになります。
吻合手術はリンパ管が集まってくる部分など、「まさにここはポイントだ」と思われる部分に行われている様に感じられます。そのためそこを迂回しなければならないことは「もどかしく」ありますが、根気よく優しくケアをしてください。
③スキンケアも優しく丁寧に
ダメージを受けているリンパ管や皮膚に対しても丁寧なケアが必要です。不必要な力が加わると瘢痕組織が増殖し、盛り上がって来たりします。摩擦や打撲などにも注意しましょう。