腕のセルフケアでの確認 


乳がんの治療のため、リンパ節廓清や乳房切除をしたために、腕(上肢)のリンパ浮腫となってしまった方がセルフマッサージをする時に、ぜひ確認しておいて頂きたいことです。このことをきちんと把握していないと間違ったケアや効果的でないケアになります。
 
◎むくんだ腕のリンパが排出される最終目的地はどこか?
腕のリンパ浮腫ではほとんどの場合、むくんだ腕と反対側の腋の下が最重要です。そこにあるリンパ節はいまだに健全なので、そこを経由して心臓へと送り込むことが可能だからです。
・右腕の浮腫の場合は左の腋の下
・左腕の浮腫の場合は右の腋の下
 
腕のリンパの一部は肩を経由して鎖骨の上のクボミに流れ込むので、同じ側の鎖骨の上のクボミも補助的な目的地にします。ただし、放射線治療の範囲が鎖骨の上までかかっている場合は目的地にはできません(マッサージも行わない)。
セルフマッサージでは背中をマッサージすることができないので、前胸部を経由して患部と反対側の腋の下へリンパを誘導することになります。しかし、乳房切除や放射線治療などでそこを使えない場合には、患部と同じ側のソケイ部を目的地にすることもできます。ただし、誘導する距離が長くなってしまうので必ずしも効率が悪いと考えられます。また、ソケイ部を使う場合には必ず腹式呼吸が必要となります。
まとめれば

 
◎誘導するリンパの目的地までの途中にダメージがあるか?
背中を経由する誘導ルートの途中に障害となるダメージがある場合は少ないですが、そこに傷痕や組織のダメージがあるとリンパの流れの障害となります。
・手術の傷痕(リンパ管の静脈吻合術も含む)、昔の傷痕など
・放射線治療の照射痕(表面上はきれいに回復していても、皮下のリンパ管網はダメージを受けている)
・火傷などの痕
患部側の胸の脇は放射線治療で照射を受ける場合も多く、そこを経由してソケイ部にリンパを誘導する場合の障害になります。
乳房切除や放射線照射で前胸部がダメージを受けている場合には、ここを経由してリンパを誘導することはできません。
胸や胸の脇だけでなく、むくんだ腕に昔の傷やダメージがある場合は、その部位を迂回してマッサージを行います。
 
◎マッサージの順序はイメージできているか?
マッサージは最終目的地(川でいえば最下流)から開始して、そのすぐ隣(その上流)に移動して手の当たる面積をマッサージし、これを繰り返して指先(最上流)までさかのぼります。
・患部と反対側の腋の下→反対側の背中(胸)→患部側の背中(胸)→患部側の肩口→上腕(二の腕)→肘周囲→前腕→手→指
 
◎マッサージの方法は正確か?
筒状である腕をマッサージするときは手のひらを少し丸めて腕の円周の1/3を包むように分けて行う。内側・外側・裏側のイメージ。

腕の表面に沿うように手を当てたら、皮膚の上を滑らさず、そのままの状態で皮膚をずらすように引き上げる。円をえがくように皮膚を回旋させることもできます。
 皮膚の上をさすりあげたり、なでたりしがちですが、そうすると摩擦で皮膚が充血し、表面が赤くなったりするので、その方法はとりません。充血はリンパを増加させます。
円を描いたり、ずらし上げるやり方は少し慣れが必要ですが、それ程難しくはありません。正確な方法を選ぶことは効果的なケアの大前提です。