複合的理学療法

手技


その他の手技
 
基本4手技のテクニックに続けてWittlingerは「拇指回旋」について、MLのマッサージの基本的な種類の項目の一つのように扱っている。
「拇指回旋」「thumb circles(B), Daumenkreis=ダウメンクライス(D)」
は拇指で「描円手技」「Stationary circle(B), Stehendekreise(D)」を行う手技であるともいえるが、Wittlingerの英語版では「The thumb lies on the back of the hand in the direction of drainage.」と記述しているのに対して、オリジナルの独語版では「Der Daumen liegt quer zur Abflussrichtung auf dem Handrücken in der Nullphase.」となっており、「拇指は排液方向に対して(横断的に)0相(つまり力の加わらない状態)で手背部に置かれる。」と「開始状態」時に指がおかれる様子が明確にされている。このことは、「拇指回旋」が単に拇指の指腹で行われるだけでなく、より大きな面で行われる場合もある特殊な手技として捉えていることが特徴といえる。Wittlingerは続けて、「With increasing transverse push the skin of the back of the hand is moved …」(英)、と排液方向に対して拇指が横断的に移動することを述べている。さらに「at the same time spiraled inward proximally.(同時に内側近位へ巻き込まれる)」としている。(独)でも「Mit anschwellendem Querschub=横断的な押しずらしを増加(D)」させ、手背の皮膚は動かされる「verzogen=歪める・捻じる、移転する(D)」と同時に近位方向へ巻き込まれる「eingedreht=巻き込む(D)」とし、この時の拇指の動きは「longitudinal push (B)」、「der Längsschub=縦方向への押しずらし(D)」であると記述している。この手技はWittlingerでは後頚部・肩甲間部・臀部などに応用される幅広い手技として紹介されていることもその査証と思われる。
Wittlingerの詳しさに比べるとFöldiやPritschowでは、「拇指回旋は」拇指の指腹による「描円手技」「Stationary circle(B), Stehendekreise(D)」の一部として捉え、部位別の施術の手順の中で、小さな面積に対応する施術法との位置づけがなされているようである。
大まかに云えば、「拇指回旋」「thumb circles(B), Daumenkreis=ダウメンクライス(D)」にはWittlingerのように大きな動きをするものと、拇指の指腹を使った小さな回旋の2つの意味を含んでいるように思われる。
 
Pritschowは基本手技に加えて浮腫が厳しい場合や、組織増殖のある部分などに用いる特殊な手技を3つ挙げている。
 
1.「Knetung, Auswrinnggriff=揉みこみ、絞り手技(D)」
は一般的なマッサージ手技の一つで、リンパ浮腫または外傷性浮腫「posttraumatisch(D)」の為に生じる増殖結合組織に対して繰り返して行われる手技で、局所に能動的な充血をもたらすとしている。
 
2.「Kieblergriff=Kiebler(キーブラー)手技(D)」
は拇指と他の四指との間にある皮膚を優しく持ち上げ「vorsichtig aufgenommen(D)」、ごく小さな拇指回旋を交互に用いて、皮下の無弁のリンパ管網「im kutanen klappenlosen Lymphgefäßnetz(D)」に集積した間質液を浮腫の無い部分へ押しずらす手技であると述べている。
 
3.「Ödemgriff=浮腫手技」
は両手を環状にして円筒形の部位の浮腫を押し出す手技であり、通常の手技よりも時間をかけてゆっくりと強めの圧で行う。浮腫部位が柔らかい場合には遠位から行うことも可能であるが、緊張性の場合には通常のリンパドレナージュと同じく近位から始め遠位へ移動する手技である。3者とも取り入れている手技である。
 
局所で行われる手技には、
胸部で行う「7回(ヶ所)手技」「seven technique (B)/ 7er-Griff (D)」があり、胸部で4回「回旋手技」「Rotary Technique (B)/ Drehgriff (D)」を行い、体側部で3回「描円手技」「Stationary circle (B), Stehendekreise (D)」を行うものである。この場合、体側部で行う手技は移動を伴い「spiralig fortschreitende Kreise (D) / 3 countinuous spirals (G)」、腋窩へ向かうとしている。
(同じ動きは背部から鼡径に向かっても行われることもあるが、特に命名されてはいない。)
 
Wittlingerでは特殊な手技「Special Techniques (B)/ Sondergriffe=ゾンダーグリッフェ(D)」として、顔面部・上肢・下肢・肩・背中・臀部・胸部など、部位別に用いられる特殊な手技を項目を立てて詳細に紹介している。FöldiやPritschowでは特に項目を設けず、各部分の施術手順の流れの中で特殊な手技を紹介している。
Wittlingerの中で特殊な手技とされているものは、圧の強度の変化、圧時間の長短、部位に対する施術接触面の変化と増減、基本手技と運動法の組み合わせ、などが主であり、手技の基本的な考え方のバリエーションともいえる。鼻部では中指をだけを使用し、眼部では2指を使用し圧迫を行うなどのバリエーションである。この変化は「様々な疾患と皮膚および組織の変性に施術するために使用する」ものであり、耳介をつまむ方法や、肩の運動法、肋骨下部を把握するなどの基本手技の変化でないもは本来的な意味で特殊手技に分類できるのではないか。
 
呼吸法と組み合わせて行われる腹部の施術も特殊手技であるが、腹部での5回(カ所)「5er」・9回(カ所)「9er」手技は腹部深部を走行しているリンパ管へ働きかける手技として頻繁に使用される。これには3者とも言及しており、下肢ドレナージュの場合には前施術的に頻繁にもしくは必ず使用される手技といえる。
 
Földiでは「Quadratus-Lumborum」手技があり、1・2本の指で第12肋骨と腸骨稜の間を乳び槽方向へ圧を加えるものである。また、妊娠中に腹部へ行う手技として「Pack」手技があり、吸気時にほんの軽い抵抗を加えるだけの特殊な手技である。「Zirkläre」手技は環状に圧迫を加える手技であるが、「浮腫手技」と同じといえる。
Pritschowと同様に「Knetung=揉みこみ(D)手技」を取り上げ、従来型のマッサージテクニックも用いている。その他、拇指と示指で硬化した部位をつかみ上げてもう一方の手の拇指でマッサージする「Hautfalten=皮膚のたるみ(D)手技」も特殊な手技の分類に入る。