複合的理学療法

圧迫療法


圧迫着衣
 
圧迫着衣は上肢・下肢ともにオーダーメイドの着衣が基本です。一定期間に集中して圧迫弾性包帯を含む複合的理学療法を行い、患肢の浮腫が最大限に軽減された状態にし、それに合わせて採寸されることが本来です。
「リンパ浮腫および静脈-リンパ浮腫に関係する慢性的な疾患の場合、患者は生涯に亘って「lebenslang(D)」のケアが必要となる。圧迫着衣を用いた静脈およびリンパ鬱滞性の四肢浮腫に対する正確なケアによってのみ、効果的な長期間のケアが可能となる。圧迫クラス・着衣素材の選択、ケアの実施には基礎的な知識が不可欠である」(Pritschowより)と述べられています。
・採寸者の理解
「採寸者は様々な浮腫疾患の特異的な特徴「Merkmale(D)」を知らなければならない。これら浮腫の特徴に対する知識を圧迫着衣採寸の際には考慮しなければならない。リンパ浮腫・静脈性浮腫・脂肪浮腫およびこれらの複合形態では、用いる素材・ケアの内容・圧迫クラスなどに関して全く異なるケアが必要である」(Pritschowより)とされ、疾患それぞれの特徴への理解が必要とされます。
〇リンパ浮腫について
リンパ浮腫ではリンパ管システムの輸送能力が低い機械的不全形態なので、「リンパ浮腫は常に蛋白質過多であるため長期間の経過で結合組織増殖が発生し、組織が硬化する」(Pritschowより)。
圧迫はリンパ浮腫の段階に応じて選択されます。第1段階は圧迫クラスⅡの丸編みの着衣で対応できます。第2段階では圧迫クラスⅢの平編みを選択します。スリーブの場合はⅡで対応します。
第3段階であり、「時には肥厚した葉状の造形をした組織と極度の皮膚変性を伴うリンパ性象皮症は高い圧迫圧を必要とする」(Pritschowより)ため、圧迫クラスⅣや二重着用も行われます。
圧迫圧と着衣の種類は、浮腫の偏在状態や年齢、放射線性障害や運動器疾患も考慮されます。「硬い「massive(D)」リンパ浮腫は厚手の平編みの織物でしか理想的なケアは出来ない」(Pritschowより)ともいわれます。摩擦の強い部分や絞扼部分がないことが必要です。
形状についても、スリーブであれば肩に固定のためのフラップが付いたものや、たすき掛けの留め紐が付いたもの、上腕部に固定帯のあるものがあります。ストッキングであれば大腿部に固定帯があるものや、ウエスト部に固定ベルトがあるもの、パンスト状になっているものがあります。適切な選択が必要です。
〇静脈性浮腫について
静脈の脆弱性によりリンパ性負荷の増加をもたらし、リンパシステムに継続的な負荷をかけます。圧迫はこの脆弱性を軽減するものであり、原因を取り除くものではありません。圧迫は静脈での血流速度を上昇させ、リンパ性水分負荷を正常化し、浮腫の無い状態を維持するために行われます。下肢の浮腫では丸編みの圧迫クラスⅡが使用され、両下肢全体の浮腫では大腿部まであるパンストタイプが推奨されます。
〇脂肪浮腫に関して
脂肪浮腫は女性に特有「auftritt(D)」の脂肪分布障害「Fettverteilungsstörung(D), fat distribution disorders(B)」であるとされています。「脂肪浮腫は多くは乗馬ズボン様に対称的に骨盤部から踝にまで及ぶ。足部には出現しない。組織はフワフワと柔らかいので靴下の輪状部分で簡単に浮腫に「食い込み」、輪状の絞扼が生じる。そのためこの症状の場合には専ら平編みの製品を使用する」。「患者に対してはサイズを合わせたクラスⅡ、場合によってはクラスⅢの圧迫パンストによる徹底した圧迫療法を行う」「脂肪浮腫で疼痛のある患者の場合には、ストッキングの採寸に先立って複合理学療法を行う必要がある」(Pritschowより)とされています。



圧迫着衣の正しい適用
 
圧迫着衣を正しく適用しない場合、治療効果を得にくいだけでなく、組織や身体に負担をかけ障害を生じることがあるため、常に配慮されなければなりません。寸法、圧力、素材、形のいずれも患者の状態に適したものである必要があります。以下にPritschowに従って提示します。
 「リンパ浮腫・静脈-リンパ鬱滞性浮腫・脂肪リンパ浮腫の治療に際しての圧迫圧は:
1)重篤度、2)偏在性(近位・遠位)、3)疾患の罹患期間(結合組織増殖、組織硬化)、4)他の疾患(リュウマチ、麻痺など)、5)患者の年齢
を考慮して決定される」
「上肢のリンパ浮腫治療の場合には、圧迫圧Ⅰ(18.4-21.2mmHg)か圧迫圧Ⅱ(25.1-32.1mmHg)が適応である。下肢リンパ浮腫では、圧迫クラスⅢ(36.4-46.5mmHg)と圧迫クラスⅣ(59mmHg以上)または2枚のストッキングを重ねて(二重ストッキング)用いる」
「静脈性の疾患に対する治療では細身の丸編みの製品(rundgestrickte Qualitäten)は有効である。… 軽度の下肢の浮腫(静脈性浮腫など)の場合にその効果が期待される」
「リンパ浮腫の圧迫治療にとって目の粗い「grobporige(D)」、厚手の編み製品「Nahtware(D)」の、広い面で圧迫が有効である。… 編み目の数は周径の大小に合わされ、それにより周径に対する正確な圧力の配分がなされる。大きな網目の構造は快適な空気の循環を確実にし、熱がこもることを防ぐ」
「採寸の際にはそれぞれの浮腫での組織の密度(硬さ)が非常に重要である」
「静脈性疾患とは異なりリンパ浮腫の場合の多くは、顕著な体積の増加、垂体状の浮腫組織のたるみを伴う唐突な狭窄、極度の皮膚のシワの深化を呈する。リンパ浮腫が更に進行すると、皮膚の肥厚や皮下組織の線維化に至る結合組織の増殖が見られる。これは、静脈性疾患の症状とは異なり、より高い圧を加えなければならないことを示している」
「ラプラセの法則(張力=圧力×半径)に従えば、肥大したリンパ浮腫の大きな半径とそれに伴う不変の張力は、圧の低下を組織上にもたらすことになる。この様な理由から、リンパ浮腫の着衣の採寸は静脈性障害とは異なり、浮腫の周径が大きいためメジャーを単に当てるだけでなく、ある程度の抵抗を感じるまで慎重に引き絞らなければならない」
「下肢の全体の長さは患者が起立することが重要である」
「下肢全体に症状がある場合、大腿部までのストッキングが必要である」
などが挙げられています。



圧迫着衣の影響
 
誤った着衣による身体への影響とその対策
 
下肢では
・足の部分が短いと多くは後方へ引き寄せられ、そのために生じるシワは、足の甲に絞扼をもたらし、しばしばストッキングの端より遠位部に浮腫をもたらす。
・足関節が細すぎると踝部の絞扼をもたらす。脂肪浮腫の場合に甲や踝に絞扼が生じる場合は緩めに採寸することで防止する。
椅子に座ることを想定し、膝の部分は緩めに採寸する。
・大腿部の採寸が大きすぎると、ずり落ち、絞扼を生じるだけでなく、必要な圧がかからない。
 
上肢では
・指のサイズが細すぎると静脈や動脈での血流障害の原因となり、指の麻痺、掻痒感、時には疼痛だけでなく指が青く変色することがある。
・グローブの折り返しが細すぎると、腕スリーブと重なる部分の圧迫圧が高くなり、手関節部分に狭窄を生じるので、周径につては「若干の」考慮を必要とする。
・肘の周径が細すぎると、肘部に絞扼と擦過傷が起こる。
・長すぎるスリーブはまくれ上がり、輪状の絞扼が生じ、腋窩の敏感な皮膚領域に擦過傷を生じる。短すぎるスリーブも上腕に絞扼を生じ、リンパ浮腫の顕著な周径の増強がスリーブの上端に誘発される。腕スリーブの上腕部の端を輪状でなく斜めにカットすることにより、問題を防止することが出来る。
・現在ある浮腫の増加、浮腫の再出現、褥瘡、擦過傷など、治療成果が得られない場合は、採寸と圧迫着衣の素材選択に誤りがあったことを示唆している。
 
採寸時の注意
1.常に四肢は浮腫が最大限に減量された状態(多くは午前中のCDP治療後)で計測される。
2.静脈性の浮腫は丸編みの標準品でケアされる。静脈リンパ浮腫などのリンパ性障害を併発している場合は、サイズを適合させた平編みの縫い合わせが適当である。
3.趾の浮腫は、サイズを合わせた趾付の圧迫トーキャップを用いる。
4.下肢の浮腫の際、腹部の周径が大きな患者の場合に着衣のずり落ちを防ぐため、肩パッド付のサスペンダーを用いる。臀部固定だけによるケアはズボン部がずり下がり膝窩にシワを作り、擦過傷となることがある。
オーダーメイドの圧迫着衣は四肢の良好な状態を維持するために必要で、採寸時は浮腫のサイズや場所、運動障害や併発症を考慮して最適なサイズを求めることが重要です。