HOME | リンパ浮腫 | 8)上肢の浮腫セルフケア

 

腕セルフケアの基本  


リンパ浮腫の治療の時にセルフケアも大切ですが、症状が厳しい場合や浮腫を減らしていく場合では、セルフだけでは効果が上がらない場合も多くあります。良い状態を維持したり、予防的にマッサージを行うにはセルフは適しています。上手に使い分ける必要があります。 
リンパ浮腫のセルフマッサージについて、ドイツ・フェルディの本を参考にまとめます。
 
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セラピストは様々な手技を使いますが、「皮膚と皮膚の下にある皮下組織を引き伸ばすこと」が基本で共通しています。
多くの人が「さすりあげる」方法でセルフマッサージを教わっているのですが、「皮膚の上を擦るのではなく、円形に皮膚と皮下組織を排液方向に引き伸ばすことでリンパ管の活動を強化し、リンパ管の拍動を速め、浮腫液を意図する方向へ導くことが出来る」ことが基本です。「さすって、流す」イメージでないことに注意が必要です。
 
フェルディではセルフマッサージの手技の練習に円を描く手技を基本にしています。
〇皮膚の上に直接、力を抜いた状態の手を、大きく当ててゆっくりと円形に動かします。
〇その時に、皮膚の上を滑り動いたり、さすったりせず、円の動きに合わせて組織自体をずらします。
〇次のステップは円の動きの2つの段階を身につけることです。
〇少しだけ力を加える「ずらし段階」と、その力を抜くと自然と開始位置まで戻ってくる「緩め段階」です。
〇「ずらし段階」で円の半分を描くまで手に力を少しだけ加えて組織を押しずらします。
〇「ずらし段階」の時に、適切な排液方向へ向かう習をします。
〇手が半分まで達したら力を抜く「緩め段階」に移り、ずらした皮膚が自然に元の状態に戻ろうとするのと一緒に手はついていきます。
〇開始位置まで皮膚が戻ったら、再度手技を開始し、繰り返し行います。
 
適切な排液方向とは、リンパ液をどこのリンパ節へ誘導し、そのためにはどのルートが相応しいのか選択するということです。これはケースバイケースですので、個々の状態によって違いがあります。
 
手技は数秒かけてゆっくりと行い、8から10回繰り返します。施術する部分から次の部分に移る際には、施術した部分が赤くなっていないか(充血していないか)を確認する。赤い場合には施術が強すぎた証拠になります(フェルディによる)。
 
まとめ:
〇大きな面で手をそっと当てる
〇皮膚とその皮下組織をずらし、決して皮膚上を滑らせない
〇ずらす時は排液方向へ向かう
〇一カ所で8から10回程度繰り返す
〇施術する部分は端が重なり合う
〇ゆっくりとしたリズムで行う
〇充血させない(皮膚を赤くさせない)
 


腕のセルフマッサージ


◎ 腕をマッサージする前に
腕のむくみを減らすためには、腕にたまっているリンパ液をどこかに散らしてあげる必要があります。上の図2の患部側の上半身を除いた部分(白い部分)がむくみを散らしてやる可能性があるところです。
①  放射線照射でダメージを受けている場合を除けば、患部側の鎖骨の上のくぼみのリンパ節はリンパ液を誘導する第一候補になります。
くぼみに合わせて3本ほどの指先で奥に押し込むようにマッサージを行います。
②  次に両肩を回旋させます。この肩甲帯の運動はリンパリンパ液を血液循環系へ送り込むことを補助します。
③  むくみのリンパ液が流れ込んでくるスペースを作る目的で、健康な側の腋の下のリンパ節をマッサージします。ここが第二候補で、腋の下全体に指を当て、①と同じく奥へ押し込むようにします。
④  次いで③の腋の下と関係の深い健康な側の胸上半身の隣接する体幹部をマッサージします。腋の下に近い肩甲帯を最初にしてから徐々に胸の中心へマッサージをする部分を移動します。
⑤  体の左右を分ける境目(胸骨)の上をマッサージし、患部側の胸上半身へ移動します。乳房切除や放射線照射の痕があれば、その部分はマッサージしません。ダメージを受けていない組織をマッサージします。
*リンパ液はタンパク質を多く含む液体なので、マッサージは同じ手技を複数回繰り返す必要があります。
 
 もう一つの候補は患部側のソケイ部(腿の付け根)のリンパ節です。
①  ソケイ部に手を当て、奥へ向かって軽く押し込むようにマッサージします。
②  そこから下腹部、ウエストへと移動します。臀部・腰の脇も行います。
③  体の上下を分ける境目はウエストラインです。ウエストライン上をマッサージしてから患部側の上半身へ移動します。ここでもダメージを受けていない組織をマッサージするので、主に胸の脇の下のほうをマッサージすることになります。
治療院では背中を健康な側の腋の下を目標にし、同じように隣接する体幹部を経由して行います。セルフの場合は手が届かないためこの方法はとれませんが、マッサージのお手伝いをしてくれる方がいれば可能です。
③④⑤と同じ順番でマッサージして下さい。
ここまでは腕を治療する準備の段階です。
 
 腕の治療は肩の付け根から始めます。
①肩甲骨の上をマッサージし、二の腕を後ろ側・外側・内側と3面に分けてそれぞれをマッサージします。手を大きく当てて1つの面に対して上中下と3分割してマッサージします。ここでも、ずらすことを心掛けて、滑らさないようにしましょう。
②肘の周囲はむくみの出やすいところなので、肘の骨に沿って指先でクルクルと丁寧にずらします。
③肘から手首までの間も①と同じく3面を意識して上中下(時にはもう一か所増やして)とマッサージします。
④手首周囲は2~3本の指先で丁寧に行います。手の平がむくんでいる場合は、手の甲側の手首部分が重要になります。手の甲からのリンパ液が集められる部分ですので、そこからマッサージを始めて、甲・指へ移動します。

 

腕セルフケアの基本  

 


上肢の浮腫の場合に注意すること
浮腫の方は怪我をしないようにすることが大切です。特に女性は家事をする機会も多いので、その際の怪我を予防するために、ちょっとした保護が大切になってきます。
①針仕事や水仕事のときは、指ぬき・ゴム手袋などで手や指を保護する。
②アイロンがけや調理の際には火傷に注意する。
③庭仕事の際には必ず軍手などの手袋を着用する。
④深爪に注意し、あま皮・ささくれも常にきれいにしておく。
⑤むくみのある腕での作業や、重いものを持つなどのことはなるべく控える。
⑥手や指のひび割れを起こさないように注意し、保湿クリームで保護する。
⑦むくみのある方の腕で血圧を測らない。
などがあります。

  


 運動法 


浮腫の際には圧迫テーピングやスリーブをしながら軽い運動をすると効果的です。
疲れを感じるまでする必要はありません。20~30分で結構です。
目的は色々な関節を様々に動かすことですから、特に決まった運動はありませんが、具体的には 
①水泳をするように腕全体を大きく回す。
②肩を前後左右に大きく回す。
③肘の曲げ伸ばしをする(手の平を一緒に開閉することも) 

④手首を回す。(逆も)
⑤腕全体を前後にひねる
⑥指と他の指を一本ずつくっつける。

⑦手の平どうしを合わせて押し合う。 

などがあります。