HOME | リンパ浮腫 | 4)浮腫ケアでの注意

 4. リンパ浮腫 - なかなか減らない3つの理由

 

 
リンパ浮腫となってしまったのでセルフケアを実践しているがなかなか浮腫が良くならないという悩みをお聞きします。それにはいくつかの理由があります。
 
◎浮腫の状態がセルフケアの適応範囲を越えているのにセルフケアしかしていない
 リンパ浮腫の場合に自己管理の実践がとても重要ですが、セルフケアには限界があります。セルフマッサージを行って、圧迫ストッキングやスリーブを着用してむくみが軽減されている方のケースは症状の軽い方です。患肢の左右差がそれ程大きくなく、柔らかいむくみの場合は、全般的な注意事項を守りセルフケアを行う事で大丈夫なことがあります。しかし、浮腫の状態が厳しくなっても相変わらずセルフケアしかしていない場合には、次第に浮腫が増加しがちです。むくみが長期間続くと皮膚が伸びたままになったり、結合組織が増えて太い状態で安定してしまいます。その状態の時にむくみ増加の要因が加わると、さらにむくみが増加してしまいます。その後、むくみ増加の要因が無くなってむくみが減っても、増加した組織や伸びきった皮膚は元に戻らないので、体には基本的にむくみを受け入れ易い条件が備わってしまっているのです。ですから、リンパ浮腫の状態がセルフケアで軽減できない時は、専門家による積極的な治療を受けた方が良いと言えます。
セルフケアはどちらかと言えば、ある程度浮腫が軽減された後の維持段階、または浮腫が発生するリスクを持った方の予防段階で行うのに適した方法といえます。
 
 ◎治療回数が少ない
リンパ浮腫でむくみを軽減して行く場合には積極的な治療が必要です。日本では難しいのですが、一定期間に集中して積極的な治療を行う過程が必要です。むくみの状態は個人差・個体差が大きく、何回・何日で充分という明確な指標は無い事が問題となります。しかし、ドイツでは数週間単位での入院治療が行われている事から考えると、治療回数が多い方が有利だといえます。日本の様に通院治療が主となっているケースではやむを得ないのですが、浮腫の状態が厳しいのに月に1回程度しか治療できない様な治療回数不足の場合では、効果が上がりにくいのが現実でもあります。また、入院治療では生活上の活動は最小限で済むので、浮腫増加の要因は少なくて済みますが、通院治療ではどうしても活動が多くなります。つまり、活動量に比べて治療する量が少なくなります。時間的・経済的な制約は仕方ありませんが、積極的な治療の回数は浮腫減少に大きく係わってきます。
 
 ◎正しい治療が行われていない
〇マッサージ・ドレナージュ
特殊なマッサージ方法であるリンパドレナージュは体の表面い近い所にあるリンパ管などに作用させる方法で、ごく軽い圧とゆっくりとしたリズムで行われるものです。皮膚と皮下組織を「ずらし」動かす方法であって、皮膚表面を「さすったり」「なでたり」「こすったり」するものではありません。マッサージ方法のイメージを伝えにくいことから、皮膚を「さする方法」でセルフケアを教えているケースが見受けられますが、正しい方法ではありません。オイルを使った方法もリンパドレナージュとは言えません。基本的な考え方と方法を理解してマッサージを行わないと効果は上がらず浮腫の軽減が難しいのです。
〇圧迫治療
使用している弾性包帯が間違っている。
浮腫軽減のための圧迫治療では第一に弾性包帯があります。浮腫減量期にこれを行う事が必要なのですが、手軽でない事、適切な圧が難しいなどの理由から敬遠されがちです。また、弾性包帯を使用している場合でも、包帯の伸び率(伸縮率)が高い、つまり良く伸びる弾性包帯はリンパ浮腫の治療には向きません。リンパ浮腫の治療には動いた時・筋肉が太くなる運動時に抑えとなる作用が求められています。良く伸びる包帯の方が巻きやすいのですが、運動時にも筋肉の膨張と一緒になって伸びるので抑えが利きません。その様な伸びの良い包帯は静脈瘤や血栓予防の場合など、動かない時に圧が作用する事を求められる治療に使用されるものです。圧がかかっていてもそのかかり方に違いがあり、適切な材料でなければ効果が上がらず浮腫が減らないのです。
〇圧が均等でない
全体に均等に圧がかかっていない場合にも効果が期待できません。むくみは圧が強い部分からは逃げ、圧迫力の弱い部分へ移動するものです。そのため全体を均等に圧迫できないとデコボコになってしまいがちです。またクルブシや膝裏など骨のでっぱりの周囲は弾性包帯でも圧のかかりにくい部分となり、浮腫が残ることも多くあります。弾性包帯を上手に巻くには経験が必要です。自分自身で行う場合でも巻いた回数が多い程上手に巻けるようになるので、諦めずにチャレンジしましょう。
〇弾性ストッキング・スリーブの使用上の注意
本来、圧迫ストッキングやスリーブは細くなった状態の維持のために使用されるべきもので、その場合個人的に異なる浮腫の状態に合わせたオーダーメイドのものが優れています。しかし計測時には適切な圧であっても浮腫の増減が激しい場合には適合しないケースが出てきます。そういった意味からもストッキングやスリーブは浮腫の状態が落ち着いた時に維持する方法として着用するのが適切です。既製品の場合は必ずしもその人の浮腫の状態に合っているとは言えない場合もありますが、経済性や入手のしやすさで優れています。
 
弾性包帯は効果は上がりますが手間がかかったり、ズレた場合に直しにくいなどの短所があります。そのため弾性ストッキングやスリーブは外出や仕事などで利用する時には非常に便利です。これらの特徴を理解して上手に使用しないとむくみを減らすことは難しいと言えます。

セルフマッサージの限界


 

リンパ浮腫は入院などで集中的に減量しても、その後も良い状態を維持して行くためのケアが必要とされるので、ケアを長期間続けて行くことが求められます。そのためにセルフケアは大切なものです。
運動や生活上の注意、圧迫ストッキング・スリーブの着用は自分自身で行えますが、セルフマッサージ(ドレナージュ)の一部は自分だけでは出来ない部分や、やりづらい部分が出てきます。腕のリンパ浮腫の方の場合の背中を通したドレナージュもその一つです。コラムの「リンパマッサージの大前提」で書いたように、ある範囲を管轄しているリンパ節は決まっているのですが、別の範囲同士が全く関係が無い訳ではなく、若干の連絡があり、この連絡を使うことが二次性リンパ浮腫の治療のやり方です。その連絡は背中の真ん中といった手の届かない場所にあり、そのことがセルフドレナージュの限界となっています。
また、マッサージを受ける部位に力が加わって緊張していない、脱力状態が大切なのですが、自分でマッサージをする場合には体勢上の問題からそこにある筋肉に力が入ってしまうことも仕方なく、これも限界の一つといえます。
更に、リンパ管の働きは副交感神経が優位になっている状態の方が活発になりますが、これは交感神経が興奮していない、リラックスした眠くなっている状態なのです。自分でマッサージをしているということは、意識がしっかりとしていて、体は活動モードになって交感神経が活発に働いている状態です。そのため副交感神経の働きは抑えられているので、体のメインテナンスに関係しているリンパ管の活動にもマイナスの影響を与えるのです。

 

細かな注意

 

リンパ浮腫のケアにとって日本の夏は厳しい季節です。細かなことに注意を払ってむくみを増やさない事が大切です。
◎虫刺され
夏は肌の露出も多く、蚊やその他の虫による虫刺されには要注意です。虫刺されは炎症となり、リンパを増やし、それを解消するためにリンパ管は余計に働かなければなりません。しかし、リンパ浮腫の方はリンパ管に余力が少ないため「むくみ」となっているので、負担が増すと「むくみ」に反映されてしまいます。皮膚は外の世界と体の間にあるバリアとして病原菌などの侵入から体を守る働きがあります。しかし、そのバリアが破られてしまうと感染症などにかかり易くなり、炎症を起こし、結局「むくみ」が増加してしまいます。ですから、長袖のシャツを着たり、虫よけスプレーをかけたりといった虫刺されなどを防ぐ工夫をしたり、刺されてしまったらすぐに手当てをすることが必要となります。
◎水虫
高温多湿な夏の時期には水虫も活発になります。冬の間には休んでいた菌類の活動が、夏に出現することも多くあります。こまめなケアが必要です。また、プールなど大勢が素足で歩く場所も感染の可能性が高いので注意しましょう。
◎あせも
夏は普通に生活している場合にも「あせも」は出来ますが、リンパ浮腫の治療では圧迫治療が必要なため、更に「あせも」ができ易くなることがあります。日中は気を付けていても、夜間に無意識に「あせも」を掻き壊す事もあり、皮膚のバリアを壊してしまいます。夏季は「あせも」でなくとも湿疹などの皮膚にダメージを与える症状が起きやすくなります。この様な皮膚のダメージを極力避けることも考えながらのリンパ浮腫治療になるので、夏季の治療は難しい選択を迫られます。
また、気温が高いので浮腫の肢全体に熱感を感じることもあります。特に皮膚が赤くなっていたり、斑点・湿疹があったり、部分的にも熱がこもっている様に感じるなどの症状がある場合には、一時的に圧迫療法を諦めなければならないこともあります。
◎日焼け
日焼けも皮膚炎症です。極力避けるものとして、リンパ浮腫治療の開始時の注意に含まれています。
この様に、夏の時期のリンパ浮腫治療には他の時期より細かな注意が必要になります。
対処法としては、
①熱感や皮膚に赤味があれば冷やす
②異変や変化があったら、すぐにお医者さんに診てもらい適切に対処する
③皮膚の変性があれば、圧迫などはしばらく見合わせる。部分的であればその部分のマッサージは行わず、全体的であればマッサージも行わず安静にしている
など、消極的な方法しかありません。
夏季は充分注意して過ごされ、乗り切って頂きたいと思います。


むくみで起きる炎症


 
注意事項のページの繰り返しになりますが、リンパ浮腫の方には時折、急な発熱を伴う炎症が起こることがあります。蜂窩織炎と呼ばれるもので、38度以上の高熱が突然出てきます。しかし、リンパ浮腫になっていなくともこのような炎症が引き金になってリンパ浮腫になりむくみが継続してしまう場合もありますし、リンパ浮腫になってしまった方でも炎症の可能性を聞いていないとか、それを知らない方がいらっしゃいます。そのため一旦炎症が起こると、どう対処して、どのお医者さんに行ったらよいか惑われる方もあります。浮腫が軽い時期でも炎症は起きますし、炎症で浮腫が更に悪化してしまう傾向もあります。どの様なものなのか、どう対処したらよいかを予備知識として知っておくことは重要です。
初期の段階では熱は出ていないが、「皮膚に赤い斑点やブツブツが出来た」「肌の一部に赤味や熱感があった」などのケースもあります。因果関係ははっきりしませんが前兆なのかもしれません。
熱は急激に高くなることが多く、急に悪寒がしてガタガタと震えがするので、冬などにはインフルエンザを疑われたというケースもあります。消炎剤や抗生物質を処方されることが多いようで、3日程度の投薬で済むケースもあれば3日から1週間程度の入院をするケースなど様々です。軽い場合には37度を少し越える程度の熱で収まることもあります。皮膚に熱を持った場合には冷やすことも必要です。
この様な炎症は疲労などで体力が落ちている時に出やすい傾向にあります。むくみのリスクをお持ちの方は特に疲労に注意する必要があります。
また、リンパ廓清を受けられた方はこのような炎症の可能性があり、炎症が起きた場合には先ず手術をなさった主治医の診察を受けるということを知っておくことが大切です。

術後のケアの注意 


 
 リンパ浮腫の治療にリンパ管と静脈を何カ所かでつなぐ吻合手術があります。すでに数十年前から行われています。
手術後の状態が良くても再び浮腫が出現する可能性が常にあるので、圧迫ストッキングなどを着用するなどのケアは継続して行く必要があります。また、一度の手術では効果が得られず、2度・3度と手術をされる方もいらっしゃいます。
手術後のケアについては、第一に主治医の指示に従うことが大原則です。その上で、更に浮腫のケアとしてマッサージ(ドレナージュ)を含むセルフケアをされる場合にも、やはりいくつかの注意が必要となります。
①基本的にはリンパドレナージュの原則を守る
ドレナージュをする際にはむくみを取りやすい環境を体に作ることです。つまりリンパ液を逃す先を作ってから、むくんだ部分のドレナージュを行うということです。健全なリンパ節や腹部のドレナージュ、呼吸法によるドレナージュを事前に行う事です。
②吻合手術をした場所・箇所を確認し、その瘢痕部分にはマッサージを行わない
たとえ手術の傷跡がどんなにきれいでも、その箇所のリンパ管が傷ついていることに違いはありませんし、瘢痕組織にもなっています。リンパマッサージの原則でも、火傷の跡や手術の跡はマッサージを加えないことになっていて、リンパ管の切断が起きていたり、組織が変性していたりするために禁止されています。この場合には、傷ついた組織の周囲をマッサージし、傷跡を迂回する方法でリンパ液の通過を助けます。瘢痕組織の周囲を慎重に丁寧にマッサージします。リンパドレナージュは皮膚に手や指をなるべく広い面積で当てて行う事を基本としていますが、周囲をマッサージする場合は指先などの小さい面でマッサージすることになります。
吻合手術はリンパ管が集まってくる部分など、「まさにここはポイントだ」と思われる部分に行われている様に感じられます。そのためそこを迂回しなければならないことは「もどかしく」ありますが、根気よく優しくケアをしてください。
③スキンケアも優しく丁寧に
ダメージを受けているリンパ管や皮膚に対しても丁寧なケアが必要です。不必要な力が加わると瘢痕組織が増殖し、盛り上がって来たりします。摩擦や打撲などにも注意しましょう。 

むくみに影響するもの



リンパ浮腫の場合はダメージを受けたリンパ器官に関係する部分にむくみが発生するものですが、そういった部分の手術はしていないのに脚や足などにむくみが発生することもありあます。
体調不良や疲れのためにむくみが発生することは良くあることです。リンパ浮腫発症のきっかけを伺うと、旅行の後や引っ越しの後など、疲労の蓄積によって生じたのであろうと推測されるものが多くあります。健康体であっても疲労時にはむくみがちになったり、風邪をひいて顔がむくむなど、体調とむくみは深く関係していることは経験があると思います。
寝たきりのお年寄りなどでは、運動不足や栄養摂取不良などで脚がむくむことも良くあります。
抗がん剤の副作用などでむくみが発生したと思われるケースもあります。抗がん剤には痛みやシビレといった副作用を伴うケースが散見され、その両方を伴うこともあります。
抗がん剤を使用開始してからむくみが発生した場合は、薬による体調不良や体力低下によって生じたものか、薬の副作用によるものかは見極められません。薬を止めれば次第に症状か軽減することもありますが、むくみが続いてしまうこともあります。同様にリンパドレナージュでむくみが軽減されることもありますが、効果があまり見られないこともあります。
痛みやシビレは神経系に属するものなので、リンパドレナージュによる痛みの軽減は考えられないといえますが、軽度のマッサージ刺激によって神経系をなだめる効果を期待できることもあり、実際のところ痛みの緩和を見た例もあります。
これらケースではドレナージュをして様子を見るしかないといえます。ドレナージュで浮腫に変化が出るならば、ドレナージュによってリンパ管の活動が刺激され、輸送するリンパ液の量が増加し、リンパ管に取り込まれる組織液の量が増加することで組織間にある水分が減少していると考えられます。
リンパドレナージュは腎臓などの泌尿器系の働きに直接関与するものではないので、それらの働きが低下しているときには利尿剤などが奏功するとの考え方もあります。
どの場合にせよ主治医に相談し、指示を受けることが必要であるのは言うまでもありません。