治療方法の選び方


肩甲骨の周囲の不快を訴えられる方が多くいらっしゃいます。 コンピューターの画面を長時間見て、作業をされることが多くなった事が大きな原因です。動物である人間はやはり動かなくてはいけないのでしょう。動くことで血液循環が良くなり、筋肉の収縮も促進され、様々な刺激によって肉体の活動が活発になります。大きな動きが少なくなることで、筋肉の伸びが抑えられ、関節の動く範囲も縮小されます。これがコリを招き、肉体の悪循環をもたらすことになります。運動が大切なのはもちろんですが、悪循環を好循環に変えるには何かのキッカケが必要です。マッサージやハリなどはそのキッカケの一つです。こういった運動不足によるコリの他に、神経的なストレスも背中や肩甲骨周囲のコリの原因となります。背中の緊張は睡眠不足や不眠を誘発し、それがまた睡眠を妨げるという悪循環をもたらします。体と精神は相互に関係し合っているので、背中や肩甲骨周囲の緊張が解けると精神的にも安定します。この逆も同様です。また、春先に多い花粉の飛散による花粉症もこの部分のコリを増加させる場合があります。運動性のものと比べて緊張緩和するのは難しいと言えますが、ここの部分の緊張緩和は症状の緩和に役立つことも経験します。特に鼻の疾患に対しては背中の肩甲骨周囲のツボを多く使用します。これに頭のツボを加えて治療すると花粉症には効果的と言えます。
  

マッサージには様々な方法・種類があり、ぞれぞれに特徴があります。
・日本的マッサージ
衣服やタオル・布の上から、主として筋肉・コリに対してアプローチするマッサージ法といえます。もちろん指圧・按摩など細かなテクニック、アプローチの仕方、考え方が違っていたりしますが、日本でマッサージというと一般的にはこのような共通要素でくくることが出来ると思います。首・肩のコリ、腰痛、頭痛などの治療にごく一般的に用いられています。他のマッサージの手技からすると比較的強めの刺激ではあります。しかし、初めてマッサージを受ける方や外国の方など、刺激に慣れていない方にも適度な強さで行うことで効果を上げられ、本来は幅広く対応が出来るものです。一方で施術者の技術の違いで、いわゆる「モミ返し」が起こることもあるので、一口に日本式マッサージと言っても見極めが必要です。
・オイルマッサージ
外国で行われるオイルやクリームを使ったマッサージは肌に直接アプローチして、皮下組織や結合組織などの浅い所にある組織に対して働き掛けるものといえます。これにも考え方やテクニックに相違がありますが、全体としては日本式マッサージよりは軽めの刺激です。関節の可動性をつける、結合組織の柔軟性を獲得する、筋肉のウォーミングアップやクールダウンなどに使用されています。ヨーロッパではごく一般的な治療法として、病院・治療院などで普段から治療に用いられています。日本ではエステで多く使用されていますが、全身的に使用する場合にシャワー設備などが不可欠であるためだと考えられます。部分的に使用することで一般の治療院でも使用可能だと思います。当院では背中・脚・足に使用しています。日本式マッサージが苦手な方、刺激に弱い方、疲れをザッと取りたい方などに適しています。もちろんアスリートの競技前後にウォーミングアップやクールダウンなどで短時間で仕上げることにも用います。 
 

・リンパマッサージ
リンパドレナージュとも言われ、皮膚表面に近い部分にあるリンパ管を刺激し、リンパ液の流れを良くしようとするマッサージ方法です。リンパ管の動きを高めて、管内にあるリンパ液をより多く心臓へ戻すことで、リンパ管の外にある蛋白質や脂肪を含んだ水分(いわゆる「むくみ」)をリンパ管内へ取り込みやすくします。つまり、マッサージでリンパ管内にスペースを作り、そこへ外から水分を持ってくる(取り込む)という考え方です。あくまでも蛋白質・脂肪・水分の取り込みと、それらの心臓への輸送力を高める作用(つまり排出)が主で、いろいろ言われている効果は副次的なものと考えられます。主にリンパ系に障害のある疾患(リンパ浮腫など)に使用されますが、リンパ系が健全なのに働きが落ちている場合にも有効です。健康な方の場合には日本式マッサージやオイルマッサージでも役立ちますが、リンパドレナージュは「むくみ」の解消に対して効率が良いと言えます。他のマッサージ法に比べて刺激が少なく、柔らかい手技です。リンパドレナージュはオイルやクリームも使用しませんし、押し込んだり、もみ込んだりする強い方法も使用しません。そのようなリンパマッサージと称するものはリンパドレナージュとは呼べません。
 

マッサージをするかハリ・灸をするかを迷う場合があると思います。時々ご相談を受けてから治療を選択することがあります。症状によって使い分けますが、どうしようか迷われている場合に次の基準が役に立ちます。
第一の基準は、痛めてからどのくらい経っているかという、痛めてからの期間です。腰痛など、筋肉や筋膜などを痛めた初期は炎症を起こしていますので、マッサージを選んでしまうと炎症症状を悪化させる場合があります。痛めた部分などに熱を持っているようなときは、基本的には安静にして患部を冷やすことになります。また、このようにマッサージで対応しにくい場合にはハリ・灸で対応することになります。患部だけでなく関係するツボや部位を治療することで症状の緩和が出来ますし、刺激量も加減可能です。 多少使いすぎた程度ならば軽めのマッサージで対処することも可能です。もちろんオイルマッサージもオーケーです。第二の基準は痛みを感じる部位です。マッサージは皮膚表面の上から内部へ刺激を加える方法ですが、ハリの場合は患部に直接アタックが可能です。患部やコリが体の奥深い所にある場合はハリの方が効果的と言えます。また、表面の緊張が強い場合には、マッサージが非常に痛く感じられる方もいらっしゃいます。マッサージの強さを時間をかけてだんだん強くできる場合もありますが、痛すぎると感じる場合にはハリや灸も良い方法です。第三の基準は好き嫌いです。どんなに良い方法でも緊張して治療を受けるよりは、リラックスして治療を受ける方が効果的なことが多いものです。時々、ハリは嫌いだが、やるとよく効くという方がいらっしゃいます。体質的なことなのでしょうが、治療中は緊張していらっしゃることが良く分かります。このような方は例外的です。治療中に寝てしまう様なストレスの無い治療は理想的です。ハリや灸は怖いからと敬遠する方も、やってみるとご自身に合った治療である場合があります。無理にお奨めするわけではありませんが、チャンスがありましたら試してみると新たな世界が広がってくるかもしれません。
 

だるさや痛みがある場合に自分で行うセルフケアをすることがあると思います。もちろん手が届く範囲ですので、腕・脚・首・肩などの部分をマッサージすることが多くなります。「手当」という言葉はつらい場所や痛みのある場所に自然と「手を当てる」からそう名付けられているという説もあるくらいですので、患部をケアすることは当然です。しかし、筋肉や腱は上手にマッサージをしないと、かえって痛みやだるさを増すことがあります。また、だるさや痛みを感じる部分だけに手当を行っても解消されない事もあります。 セルフマッサージをする場合にリスクが少ないのは、痛みを感じる点を押すことです。「痛いけど気持ち良い」と感じる強さで10秒くらいじっと押し続けると、その部分のコリが緩んでくることが感じられる時があります。すると痛みも和らいでいるものです。押す角度や強さはその時によって違いますので試してみる必要があります。ぐいぐい押しこんだり、ゴリゴリ揉んでしまうと筋肉の線維を痛め、炎症を起こす可能性もあり、いわゆるモミ返しも起こりますのでお奨めできません。筋線維を傷めることが少ない「押す」ことが比較的安全と言えます。また、痛みやだるさはその部分だけでなく他の部分も関係していることも多く、そちらも同じようにケアする必要があります。関連部分については専門家のアドバイスも助けになります。
 

腰痛は以前は冬の時期に多くみられるものでした。寒さで筋肉が硬くなっていたり、足元の冷えで誘発されることが多かったためと考えられます。しかし、クーラーが一般的に使われるようになってから、夏季にも腰痛が頻発するようになっています。これもやはり足元の冷えが要因だと思われます。 鍼灸で使うツボの系統では、「腎」に関係するツボが腰痛に使用されます。「腎」のツボの系統は足の裏の「湧泉」から始まり、フクラハギの内側を通って腹部や胸部に達します。このため足元の冷えが下腹部にも影響するとされ、腹部の「弱り」がその裏側に位置する腰にダメージを与えるのです。また、腰の上部には「腎兪」というツボもあり、やはり「腎」と関係しています。腰痛の場合はこの部分に痛みやコリといった反応が多く見られます。これらのツボを使いながら腰痛の治療を行います。不自然な冷えのために夏季の腰痛は治りが悪い場合も多く見られます。シャワーを使うことが多い時期ですが、湯船につかってみると足が冷えていたことが自覚できます。腰痛の予防や治療には足湯や半身浴など、夏特有の冷えの解消が役立ちます。また、汗は体を冷やす役目があって、注意しないと思った以上に筋肉が冷えて腰痛を起こすケースもあり注意が必要です。
 


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